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意志を発動させる為に

東京明鏡塾から転勤に伴い、大阪明鏡塾を受講している外科医からの報告です。

理学療法士でもなく、整体師や鍼灸師といった、機能回復や改善を直接手助けする勉強は一切していません。

人や身体について「明鏡塾」で学んでいるだけです。

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70代男性。 進行性核上性麻痺という神経疾患でパーキンソン症状が出ているBさん。 普段は歩行器を使用していますが、歩行器にもたれかかり身体は90度近く曲がって倒れこむような歩き方をされている方です。 仮面様顔貌や無動、固縮といった、パーキンソン症候群特有の症状もそれなりにある方です。 Bさんは猫背で体が固まっており、私はBさんが視線を上げるところを見たことがありませんでした。 目線を合わせるためには、下から覗き込まないといけませんでした。

ある日、私は違う方に対して膝の触診を行っていました。 その日はBさんの奥様がいらっしゃっ ていました。 奥様は歩行器を一生懸命引っ張り、歩かせようとしていますが、そうすればするほど歩行ではなく、倒れこむ体勢を何とか歩行器で支えているというような状況になっていました。

違う方の膝の触診を終えたのち、何故かわかりませんが、その人のところに行き、少し歩行の訓練を開始してしまいました。 右足→左足→右足→左足と体重を乗っけていく。 そうすると、歩き方が少しずつ変わってきて、もたれかかる状態が少し改善しました。

その次にコチコチに固まっている体の色んな部分を触ってみて、緩ませるようにしてみました。 そして、最後に視線の誘導を私の指で行い、歩行訓練を続けました。 その結果、私が歩行器の速度調整を行って おりましたが、姿勢の変形はかなり改善し、立っているときにBさんと顔を合わせることが出来るようになりました。 そばでずっと見ていた奥様は、「こんな風に顔をあわせられたのは何時ぶりだろうか。」 「正直、この人はもう車いすかと諦めていた。」 「こんな風に歩けていることが信じられない。本当にありがとう先生。」 とおっしゃっていました。

Bさんで追加ですが、私がこの介入後に驚いたことがありました。 「相撲が見たい」と少し声が出るようになり、表情も出るようになったことと、相撲を見ようと自分で姿勢を戻そうとしてくれたことです。

やはり、「こうしたい!」という自分の意思というものがあれば、病気の状態を変化させることが出来る。 ただ、症状が一見進行しているような状況では、身体の進行に伴って心も「こうしたい」という気持ちが薄れていっている。 だから、身体を少し調整してあげることで、心の状況が変わり意思が出てくるようになる。

「意思発動のための身体 の調整」 これを少しずつ自分の手でやっていきたいなと、改めて感じた出来事でした。

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